2014年11月17日月曜日

ペンタレイ

久しぶりに良いカテーテルが開発されました。名前はペンタレイといいます。ペンタというのは、「5」という意味で、中心から5本のスプラインが伸びており、一つ一つのスプラインに4つの電極がついています。

このマッピングカテーテルは、1本1本のスプラインが細くて非常に柔らかいので、心筋のどんな小さな空間にでも入り込むことができます。なおかつスプラインは、盲端になっているので、心室の腱索に引っかかることがなく、心房と心室の境界部分の弁輪というところも、安全にマッピングできるのです。

今までカテーテルを自由に持っていけなかったところを、簡単に素早く、検索できるようになりました。

このカテーテルを早速使用し始めています。今までのカテーテルならば、非常に時間がかかった、もしくは分からなかったかもしれない心房細動の起源部位が同定できています。さらに、治療成績の向上が期待されます。

写真の中央にある、ヒトデのような形をしたカテーテルがペンタレイです。

2014年8月19日火曜日

カテーテルアブレーション時の被爆について

福島の原発事故をきっかけに、医療被曝の危険性にも注意が向けられ、心房細動アブレーションに伴う被曝線量を聞かれることが多くなっています。そこで、当院でのアブレーション中の被曝線量を実測してみました。

120人の心房細動アブレーションを実施した際の、入射皮膚線量は平均で175mGyでした。この被曝線量はどの程度危険なのか?

名古屋大学、瀬口先生の人体モデルを用いた実験によると、心房細動アブレーション実施時の入射皮膚線量は700mGyで、実効線量が34.8mSvでした。条件が異なるので、この実験結果をそのまま当院の結果に当てはめることはできませんが、当院での心房細動アブレーションによる入射皮膚線量が175mGyであることを考慮すると、実効線量は8~10mSvであることが考えられます。

今まで、「実効線量が100mSv以下では、がん死亡の危険性が増すという報告はない」ということを考慮すると、当院での心房細動アブレーションに伴う被曝線量程度で、がん死亡の危険性が増すという心配はしなくても良いと思われます。

先日、心腔内エコーの視察でカナダに行ってきました。ナイアガラ瀑布の滝です。


2014年2月9日日曜日

心房細動が再発した時の患者さんの対応方法

先日、電話でご質問のあった内容です。「アブレーション後1~3か月以内に心房細動が再発した時には、患者はどうすれば良いのか?」

アブレーション後の不整脈の再発には、心房細動と心房粗動の2パターンあります。心房細動で再発する場合は、多くの場合、アブレーション治療をする前とほぼ同じ状況になるだけですので、基本的には安静のみで様子を見ていただき、もし、動悸症状が辛いようならば、以前、試したことがある薬を内服していも構いません。術前が慢性心房細動の状態であっても、退院時に渡された抗不整脈薬を内服し、安静にしているだけで、正常の脈拍に戻ることも良く見受けられます。

心房粗動で再発した場合には、感じられる動悸は、間隔の規則正しい速い脈です。動悸症状はアブレーション前より、しばしば悪化します。150拍/分以上の速脈であれば、長く続くと心不全も発症しかねません。できるだけ、早くアブレーションを実施した病院もしくは、近所の医院を受診することをお勧めします。

患者さん自身は、再発した不整脈が、心房細動なのか心房粗動なのか良くわからない場合もあります。一番大切なのは、不整脈が再発した時の症状です。動悸症状が激しくて、辛いようならば、病院を受診したほうが良いと思います。

関東が大雪の2月8日は北海道に出張アブレーションに行っていました。北海道は関東と逆で、晴天。帰りの羽田ゆきの飛行機が欠航になったため、北海道でゆっくりしました。士別町の丘陵地帯です。すばらしい景色でした。雪上に動物の足跡が残されています。どんな動物だったか、想像すると楽しいですね。

2014年2月7日金曜日

アブレーション後にお腹の調子が悪くなったら

食道は心臓と隣合わせに存在するために、心房を焼灼する際に生じた熱が、食道にまで及ぶことがあります。その際に、食道の外側を縦走している食道胃迷走神経が熱で障害を受けることがあります。

この神経が障害されると、食物が胃に入っても、胃の蠕動(ぜんどう)運動が十分に起こらず、食物が胃に貯留し、お腹が張ったような感じや、吐き気、おう吐を引き起こします。これらの症状は、術後急に発症することもありますが、数日後に気づかれることもあります。

症状緩和のためには、エリスロマイシンの静脈注射が有効です。神経を介さずに直接胃の動きを高めてくれます。しかし、根本的には、保存的治療しかありません。しばらく絶食するか、消化の良いものを食べながら経過を見なければなりません。症状が改善するのに要する時間は、障害の程度により様々ですが、3ヵ月から1年です。

このような合併症を引き起こさないように、食道障害の予防が重要です。そのためには1)できるだけ、食道上の心房筋を焼灼しない、2)食道上の心房筋を焼灼する際には、食道温度を測定しながら、高周波の出力を下げる、などの工夫が必要です。しかし、あまりにも食道障害を怖がってしまうと、心房細動そのものが十分に治らないということも起こりうるので、バランスが重要です。

食道迷走神経障害によって、蠕動不全を起こした胃です。食物が貯留して、消化しきれていない状態です。

参考文献


2014年1月28日火曜日

アブレーション後に心房細動が再発したら・・

患者さんによっては、心房細動アブレーション後に、残念ながら心房細動が再発する場合があります。前回、述べたように、アブレーション術後3ヶ月以内に起きた心房細動は再発とみなさず、安静もしくは抗不整脈薬で経過を見ます。

つまり、術後3ヶ月以降に起きた心房細動を「心房細動の再発」と定義し、再治療を考慮します。その際の症状は、患者さんにより様々で、以前の心房細動より、発作頻度、持続時間が随分短く、軽い場合や、稀ですが、逆に程度や頻度が悪化する場合もあります。

アブレーション後の心房細動再発の原因には、次の二つの可能性があります。(1)初回に治療した肺静脈の電気的伝導が再開し、肺静脈内の心房細動起源により、心房細動が起きている、(2)初回に治療した部位はすべて治癒しているが、取り残した心房細動起源、もしくは経過により新たに出現した心房細動起源により心房細動が起きているです。この二つの内のどちらかであるかは、カテーテルを心臓の中に入れてみないと分かりません。しかし、頻度としては、(1)が圧倒的に多いのです。

肺静脈の再伝導部位は通常1カ所もしくは数か所のことがほとんどですので、治療は容易です。つまり心房細動の再発の原因の多くは、上記(1)であり、治療は容易なので、再発した方には、原則として2回目のアブレーション治療をお勧めしています。
先日、北海道名寄市立総合病院にアブレーションを施行しに行きました。現地の気温は-20℃、横須賀の気温は4℃・・。日本は広い。

2014年1月26日日曜日

心房細動カテーテルアブレーション術後急性期注意事項について

心房細動アブレーションの際は、ほとんどの患者さんで肺静脈入口部を焼灼します。私が気に入っているイリゲーションカテーテルを用いると、左右肺静脈と上大静脈の隔離のために要する焼灼時間は合計で約38分です。その通電時間に相当する火傷が心臓に発生します。

どなたでも、1度や2度は、皮膚の火傷を経験したことがあると思います。通常、火傷をした部位は、赤く腫れあがり、ヒリヒリして、痛みを自覚します。火傷の程度にもよりますが、しばらくすると炎症による体液が滲み出てきます。

それと同じことが、心臓の中でも起こるのです。アブレーション時に焼灼した心筋は、火傷で膨れ上がります。その影響により、アブレーション当日や翌日は37℃程度の微熱が出るくらいです。しばらくすると、その火傷した部位から炎症性の物質が放出され、その刺激によって、焼灼をまぬがれた心房筋から、心房細動が引き起こることがあるのです。

以前のデータですが、私が調べた所、慢性心房細動の患者さんの場合は特に多く、約3割の方で、アブレーション後1~3ヶ月以内に心房細動を発症しています。しかし、その多くの人で、その心房細動は次第に落ち着いてきます。そのために、学会のガイドラインにも、「術後3ヶ月位内に発症した心房細動は、急性期一過性の心房細動の可能性もあり、心房細動の再発とはしない」と記載されています。たとえ、アブレーション直後に心房細動が発症しても、次第に落ち着いてくることは、良く経験されるので、気落ちせずに担当医に相談して下さい。

横須賀共済病院 A棟10階からの眺めです。中央やや左手に、東京湾唯一の自然島「猿島」が見え、その先に房総半島が見えます。晴れた日には、青い東京湾全体が見渡せます。

2014年1月15日水曜日

伝家の宝刀

以前、名刀正宗のお話をしました。カテーテル先端から生理食塩水を噴射しながら、高周波通電するイリゲーションカテーテルで、その噴射孔が56個あるものです。切れ味が抜群で、尚且つ、しっかりと考えて使えば、安全性も高く、とても気に入っています。

しかし、その後、米国で開催される世界で最も権威のある不整脈学会で、「このアブレーションカテーテルは合併症を多く引き起こす」と報告され、その場で、発表を聞いていた私は全く同意できませんでした。

私と同じように考えている医師はいるもので、最近、このアブレーションカテーテルの有効性と安全性を証明する論文が2つ発表されました。一つの論文では、106人の患者さんを、6穴(従来型)もしくは56穴(名刀正宗)のアブレーションカテーテルを使用する群に均等に分けて、心房細動治療をしたところ、56穴のカテーテルを使用した患者さんの方が、急性期の肺静脈隔離維持率が有意に高い(90.5% VS 95.2%)と報告されました(1)。もう一つの論文では、160人の患者さんを、やはり同じように、2つのカテーテル治療群に均等に分けたところ、56穴のカテーテル群の方で、肺静脈隔離に要する時間が有意に短い(35.4分 VS 39.9分)と報告されました(2)。また、2つの論文ともに、どちらのカテーテルを使用しても合併症率は変わらないというものでした。

簡単に言うと、このカテーテルを使用すると、より早く、より確実に肺静脈隔離をすることができるということです。施行する医師により好みは別れるかもしれませんが、今考えられる中で最高の刀だと思います。

この写真をクリックするとイリゲーションカテーテルが生理食塩水を噴射している動画に移動します。


参考文献
(1)Bertaglia E J Cardiovasc Electrophysiol. 2013;24:269–273. 
(2)Park C-I, . J Cardiovasc Electrophysiol. 2013;24:1328–1335.