2013年8月27日火曜日

カテーテルアブレーションは痛いか?

カテーテルアブレーションとは、カテーテル先端電極を心筋に接触させ、そこから高周波の電気を流し、不整脈の原因となっている心筋を焼灼する治療方法です。焼灼する心筋内膜には、痛みを自覚する神経は分布していませんが、焼灼によって生じた熱が、心外膜に到達し、鋭い痛みを自覚します。そのため、アブレーション中は痛みを消失させるような、静脈麻酔を使用しています。しかし、完全に痛みをとるために、静脈麻酔を十分投与すると、呼吸が止まってしまうという弊害が起きてしまう人もいるのです。そういう人では、麻酔の量をを少なくせざるを得ません。しかし、その場合は痛みも完全にとることができず、患者さんには多少の痛みは我慢していただいていました。

痛みを完全にとるためには、全身麻酔という方法が最も確実です。しかし、昨今、麻酔科医が不足し、カテーテルアブレーションに人員を割くだけの余裕がありません。そこで、最近開発された非侵襲的陽圧換気(NIPPV)という方法を利用し始めました。これは、気管挿管といって、直径が1cmくらいの管を、気管支に挿入しなくても、鼻と口をピッタリ覆うようなマスクを装着することで、呼吸が停止しても、肺に強制的に空気を送る機械です。

意識と痛みが完全に無くなるまで、静脈麻酔を投与しても、この非侵襲的陽圧換気を行うと、呼吸は停止しません。患者さんには「寝ている間に、アブレーションが終わってとても楽だった。」とても好評で、アブレーションを実施する医師にとっても、患者さんの痛みに伴う体動がなくなり、呼吸も停止せず、ストレスが減少し、手技時間が短縮します。おそらく、成功率向上にも寄与すると思われます。

私達はこの方法を2013年8月から導入しました。もう患者さんに「アブレーションは痛くて、辛かった。」とは言わさずに済むと思います。
左側の小さい機械が非侵襲的陽圧換気を行う機械です。チューブが1本患者さんに伸びて、呼吸を管理しています。

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