食道は心臓と隣合わせに存在するために、心房を焼灼する際に生じた熱が、食道にまで及ぶことがあります。その際に、食道の外側を縦走している食道胃迷走神経が熱で障害を受けることがあります。
この神経が障害されると、食物が胃に入っても、胃の蠕動(ぜんどう)運動が十分に起こらず、食物が胃に貯留し、お腹が張ったような感じや、吐き気、おう吐を引き起こします。これらの症状は、術後急に発症することもありますが、数日後に気づかれることもあります。
症状緩和のためには、エリスロマイシンの静脈注射が有効です。神経を介さずに直接胃の動きを高めてくれます。しかし、根本的には、保存的治療しかありません。しばらく絶食するか、消化の良いものを食べながら経過を見なければなりません。症状が改善するのに要する時間は、障害の程度により様々ですが、3ヵ月から1年です。
このような合併症を引き起こさないように、食道障害の予防が重要です。そのためには1)できるだけ、食道上の心房筋を焼灼しない、2)食道上の心房筋を焼灼する際には、食道温度を測定しながら、高周波の出力を下げる、などの工夫が必要です。しかし、あまりにも食道障害を怖がってしまうと、心房細動そのものが十分に治らないということも起こりうるので、バランスが重要です。
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