2017年2月19日日曜日

Z縫合 術後の安静時間が大幅に短くなりました

マジンガーZは子供の頃、私のヒーローでした。格好良くてともかく強い。その主題歌は今でも諳んじることが出来るくらいです。フェアレディーZは私の学生時代、一世を風靡したスポーツカー。流線形が美しく、特に赤の車が好きでした。Z旗は、現在は横須賀に係留されている戦艦三笠が、往時、マストに掲げ、必死の覚悟をもってロシアのバルチック艦隊に向かっていきました。Z(ゼット)には、アルファベットの最後の文字なので、これが最後、もう後が無いという意味が含まれ、強い決意を表す時に使われるようです。

カテーテルアブレーションの際は、太ももの太い静脈(大腿静脈)を通してカテーテルを心臓に持っていかなければなりません。その際、そこに直径3mm弱の穴が2、3箇所開いてしまいます。アブレーションが終わった後は、この穴を圧迫止血しますが、止血が完了するまでの6〜8時間、患者さんはベッド上で仰向けになったまま安静にしていなければなりませんでした。

この6〜8時間が辛い。同じ体勢でじっとしていると腰が痛くなります。腰に湿布を貼ったり、痛み止めを注射したりと色々な方法で対応してきました。私は今までアブレーション治療にまつわる諸問題、主に患者さんにとって苦痛なことを様々な工夫で解決してきました。しかし、この術後の安静時間だけは、止血という生体の自然な反応の結果を待たなければならないので、どうてしも短縮することが出来なかったのです。

しかし、解決方法があったのです。画期的な方法です。その名もZ縫合。太もものカテーテルを挿入した静脈の皮膚の部分をZ型に縫合すると圧迫止血が不要になるという研究報告が出たのです。当院でもこの方法を利用し、今では術後の安静時間が3時間に短縮され、5時間後にはベッド上フリー(ベッド上にいるならばどういう体勢を取っても良い)にまでなるようになりました。Z縫合がアブレーション治療の「長時間の安静時間」という問題の最後の切り札になってくると思います。

マジンガーZとZ縫合 
参考文献 
Europace (2016) 18, 1545–1550

4 件のコメント:

  1. よかったです。アブレーション後の安静時間が辛かったのを思い出します。いつも患者の身になって考えていられる桑原先生に感謝します。本当に医療の世界も日々進歩していますね。ありがとうございました。kk

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  2. 私も東京ハートリズムクリニックでカテーテルアブレーション治療を受けました。
    腰痛持ちなので、治療後長時間仰向けのままでいるのがとても辛かったです。
    6時間を覚悟していましたが、私もこのZ型縫合をしていただいたのでしょう、5時間で動いても大丈夫でした。
    もう限界に近かったので、あとⅠ時間と言われたらどうなっていたやら。
    治療は全身麻酔で痛みもなく、桑原先生の「任せてください。」という言葉にすべてお任せし、安心して治療を受けられました。
    治療後、心房細動の発作もなく過ごしています。
    桑原先生、本当にありがとうございました。

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  3. 皆さん、手術に成功されて良いですね。
    私はもうする事はないと思いますが、素晴らしい医療の進歩があったのですね。
    思い出します、どうにもならない腰のだるさ、辛かったです。
    お忙しいでしょうが、お体お大事にされて下さい。
    (2月末、ポーランドに行って来ました、なんとか無事に戻りました(笑))

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  4. しゅうちゃん2017年7月16日 1:42

    7月15日の講演会に参加してきました。
    限定100名との事で運よく参加できて感謝しています。

    講演の内容は専門的でありながら言葉や図解でとても分かりやすくあっという間に終了した感じです。

    講演後の質疑応答では数名の方が真剣に相談されていましたがおそらく参加者の全員の方が自分の現状を聞いてほしくてみなさん質問をしたかったのだろうと感じました。せっかく専門医の先生に質問できるチャンスですからね。

    患者の皆さんは掛かりつけの先生の治療方針やご指導に何らかの不信感や不安を感じていてこの講演会を聞きにきてさらに踏み込んだ悩みを解決できないものかと積極的に参加されたんだろうと思います。
    私も以前かかりつけの先生にアブレーション治療を進められましたがその時は怖くて辞めてもらいました。
    当時はセカンドオピニオンが普及していなくて頼ることもできなかったのですが
    ハートリズムクリニックのような不整脈に特化した医院が出来たことでより専門的な治療が受けられると信じます。

    このように患者としてはより高度な安心できる治療を願っているわけですから講演会などに参加して信頼できる先生にたどり着こうと願っているわけです。
    今後もどんどんと講演会を開催して頂いて悩んでいる患者さんを救って頂きたいと思います。

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