2014年2月9日日曜日

心房細動が再発した時の患者さんの対応方法

先日、電話でご質問のあった内容です。「アブレーション後1~3か月以内に心房細動が再発した時には、患者はどうすれば良いのか?」

アブレーション後の不整脈の再発には、心房細動と心房粗動の2パターンあります。心房細動で再発する場合は、多くの場合、アブレーション治療をする前とほぼ同じ状況になるだけですので、基本的には安静のみで様子を見ていただき、もし、動悸症状が辛いようならば、以前、試したことがある薬を内服していも構いません。術前が慢性心房細動の状態であっても、退院時に渡された抗不整脈薬を内服し、安静にしているだけで、正常の脈拍に戻ることも良く見受けられます。

心房粗動で再発した場合には、感じられる動悸は、間隔の規則正しい速い脈です。動悸症状はアブレーション前より、しばしば悪化します。150拍/分以上の速脈であれば、長く続くと心不全も発症しかねません。できるだけ、早くアブレーションを実施した病院もしくは、近所の医院を受診することをお勧めします。

患者さん自身は、再発した不整脈が、心房細動なのか心房粗動なのか良くわからない場合もあります。一番大切なのは、不整脈が再発した時の症状です。動悸症状が激しくて、辛いようならば、病院を受診したほうが良いと思います。

関東が大雪の2月8日は北海道に出張アブレーションに行っていました。北海道は関東と逆で、晴天。帰りの羽田ゆきの飛行機が欠航になったため、北海道でゆっくりしました。士別町の丘陵地帯です。すばらしい景色でした。雪上に動物の足跡が残されています。どんな動物だったか、想像すると楽しいですね。

2014年2月7日金曜日

アブレーション後にお腹の調子が悪くなったら

食道は心臓と隣合わせに存在するために、心房を焼灼する際に生じた熱が、食道にまで及ぶことがあります。その際に、食道の外側を縦走している食道胃迷走神経が熱で障害を受けることがあります。

この神経が障害されると、食物が胃に入っても、胃の蠕動(ぜんどう)運動が十分に起こらず、食物が胃に貯留し、お腹が張ったような感じや、吐き気、おう吐を引き起こします。これらの症状は、術後急に発症することもありますが、数日後に気づかれることもあります。

症状緩和のためには、エリスロマイシンの静脈注射が有効です。神経を介さずに直接胃の動きを高めてくれます。しかし、根本的には、保存的治療しかありません。しばらく絶食するか、消化の良いものを食べながら経過を見なければなりません。症状が改善するのに要する時間は、障害の程度により様々ですが、3ヵ月から1年です。

このような合併症を引き起こさないように、食道障害の予防が重要です。そのためには1)できるだけ、食道上の心房筋を焼灼しない、2)食道上の心房筋を焼灼する際には、食道温度を測定しながら、高周波の出力を下げる、などの工夫が必要です。しかし、あまりにも食道障害を怖がってしまうと、心房細動そのものが十分に治らないということも起こりうるので、バランスが重要です。

食道迷走神経障害によって、蠕動不全を起こした胃です。食物が貯留して、消化しきれていない状態です。

参考文献