2017年6月14日水曜日

リプレイ 非肺静脈由来心房細動起源の同定方法が進歩しました

スポーツの世界では、肉眼での判定が難しい時や審判員の判定に異議がある時に、ビデオ判定が導入されてきています。このビデオ判定のことを英語でリプレイもしくはチャレンジと言いますが、アブレーションの世界でもカルトシステムがリプレイ機能を開発、導入しました。

この機能を使用すると、カテーテルが心臓の中で移動した際に捉えた電位とその時のカテーテルの空間的位置を、コンピューターがすべて記録し続けます。何か重要なイベントが起きると、その時に逆戻りし、その際の電位と場所を再表示(リプレイ)できるのです。

この機能は心房細動起源の場所を同定する際に極めて有効です。心房細動は始まる直前に、短時間で心房性期外収縮が頻回に出現することがあるのです。多くの場合その全てが、同一の心房細動起源から出現しています。今までのシステムでは、それらすべてを捉えることができても、その内の一つの興奮の電位と場所しか解析できませんでした。コンピューターの記憶容量より、ある一定時間しか逆戻りできなかったのです。しかし、この最先端技術のリプレイを使用すると、複数の心房性期外収縮すべての、カテーテルの電位と場所を再表示できます。これら全部を統合し解析すると、心房性期外収縮の場所、すなわち心房細動起源の場所が詳細に判定出来るというわけです。

また、その時捉えた複数の心房性期外収縮が、すべて同一のものであるかを確認するために、それぞれの興奮の伝播様式を見比べなければなりません。カルトシステムはリプレイ機能を導入すると同時に、解析画面を2つ(デュアルモニター)にしました。モニターが2つになることで、興奮様式が詳細に観察可能となり、解析が容易かつ正確になったのです。アブレーション技術がまた一つ前進し、非肺静脈由来心房細動起源治療の成功率が更に高まってきています。
東京ハートリズムクリニックの庭の花を植え替えました。11月〜5月はパンジー、ビオラで私達の目と鼻を楽しましてくれましたが、6月〜11月はベコニアです。赤、白、ピンクの3種類です。

2017年2月19日日曜日

Z縫合 術後の安静時間が大幅に短くなりました

マジンガーZは子供の頃、私のヒーローでした。格好良くてともかく強い。その主題歌は今でも諳んじることが出来るくらいです。フェアレディーZは私の学生時代、一世を風靡したスポーツカー。流線形が美しく、特に赤の車が好きでした。Z旗は、現在は横須賀に係留されている戦艦三笠が、往時、マストに掲げ、必死の覚悟をもってロシアのバルチック艦隊に向かっていきました。Z(ゼット)には、アルファベットの最後の文字なので、これが最後、もう後が無いという意味が含まれ、強い決意を表す時に使われるようです。

カテーテルアブレーションの際は、太ももの太い静脈(大腿静脈)を通してカテーテルを心臓に持っていかなければなりません。その際、そこに直径3mm弱の穴が2、3箇所開いてしまいます。アブレーションが終わった後は、この穴を圧迫止血しますが、止血が完了するまでの6〜8時間、患者さんはベッド上で仰向けになったまま安静にしていなければなりませんでした。

この6〜8時間が辛い。同じ体勢でじっとしていると腰が痛くなります。腰に湿布を貼ったり、痛み止めを注射したりと色々な方法で対応してきました。私は今までアブレーション治療にまつわる諸問題、主に患者さんにとって苦痛なことを様々な工夫で解決してきました。しかし、この術後の安静時間だけは、止血という生体の自然な反応の結果を待たなければならないので、どうてしも短縮することが出来なかったのです。

しかし、解決方法があったのです。画期的な方法です。その名もZ縫合。太もものカテーテルを挿入した静脈の皮膚の部分をZ型に縫合すると圧迫止血が不要になるという研究報告が出たのです。当院でもこの方法を利用し、今では術後の安静時間が3時間に短縮され、5時間後にはベッド上フリー(ベッド上にいるならばどういう体勢を取っても良い)にまでなるようになりました。Z縫合がアブレーション治療の「長時間の安静時間」という問題の最後の切り札になってくると思います。

マジンガーZとZ縫合 
参考文献 
Europace (2016) 18, 1545–1550

2017年1月10日火曜日

たばこと心房細動

心房細動の患者さんの診察中に、夫の喫煙を止めさせたい奥様から、「たばこは心房細動の原因にならないのですか?」と良く質問されます。

「たばこと心房細動」その両者の関係を調べた疫学的研究が6つあります。その内2つの研究は両者に関係はないとしていますが、他の4つの研究は、喫煙は心房細動の危険因子であると指摘しています。喫煙により1.5倍心房細動を引き起こしやすくなるようです。

実験ではニコチンにより心筋に線維化が起こることも判明しました。線維化した心筋では電気がスムーズに流れなくなり、一旦始まった心房細動が続きやすくなってしまいます。これは持続性心房細動のメカニズムの一つの心房細動基質という状態です。

禁煙することで、心房細動の発症率は非喫煙者と同等になることも明らかにされています。喫煙者は平均で10年寿命は短くなりますが、30歳、40歳、50歳、60歳で禁煙すると、それぞれ、10年、9年、6年、3年、寿命を稼ぐことができます。できるだけ早期に禁煙することが重要です。


東京ハートリズムクリニックから西の方を見た風景です。
この中に小さいのですが、私の大好きな以前登ったところが写っています。